春から娘がお世話になる幼稚園では、週に一度2歳児のクラスがあり、引っ越してから参加させてもらっている。午前中の2時間程、20人弱の親子達で、周囲を散策したり、例えばみかん狩りやクリスマス会などの季節の行事を楽しんだりする。
娘は、引越す前の川崎のマンションでは、あまり歩くのが得意ではなかった。その頃はまだ2歳半くらいというのもあったけれど、とにかくすぐに「だっこ!だっこ!」と言う。マンションでは玄関を開けたらすぐに外というわけではないので、外に出るにもぐるっとエントランスホールまで出ていかねばならず、また周囲は車も多くて遊ぶのも近場の公園ばかり。長距離を歩くのに慣れていない。春から入る幼稚園はとにかく自分たちの足でどこまでも歩くとのこと。このまま幼稚園に入るとちょっと不安だなあと思い園長先生に相談したところ、途中からでも参加してみてはどうかと言われ二つ返事でお願いすることに。
「たんぽぽ」というその2歳児クラスに入って驚いたのは、とにかく子供たちがとてもきちんとしている。例えば、先生が「見繕いをきちんとしましょうね。」と言うと、ズボンからはみ出ているシャツを自分で中に入れる。靴下がずり落ちていたら自分で上げる。騒いだり走りまわったりする子もいなくて、先生の言うことをきちんと聞ける。でも、それは4月からの積み重ねであって、先生の話だと、4月にはまだ泣いたりぐずったりする子もいたけれど、季節を経てどんどん成長していったとのこと。
でも、その成長について、先生が褒めるのは子供ではなかった。先生はいつも子供達はこんなに色々なことが出来るようになりましたねと、子供の成長を振り返ったあとに必ず、「でも、えらいのは子供じゃありません。子供たちももちろんえらいけれど、えらいのはお母さんです!」ときっぱりと言う。「お父さんでもありません。お母さんですよ!」「おかあさん、あなた達は本当にえらいんです!」と言ってくれる。毎日、だだをこねても泣かれても、子供と真剣に向きあって成長を見守ってきたのはお母さん、だからえらいのはお母さんなんですと、そうはっきり言ってくれる先生の言葉を聞くと、本当に涙が出そうになる。
子育ては本当に毎日のことで、特に私は一人目の子なので、毎日のように悩んだり反省することも多々ある。そして、気づくと心がカチコチに固まってしまったりすることもある。そういうときに、「お母さんはえらいんです。」と、その一言が、こんなにも心を溶かしてくれるのだなあと、本当に嬉しかった。毎日子育てをしていてもそれは当たり前のことで誰も褒めてなんてくれない。それでも、「えらいんね。がんばってるね。」と、そう言われたかったんだなと、先生の言葉を聞いたときに強く思った。たった一言でこんなにも救われるんだなと。
最近の新聞では、「保育所をもっと増やそう」「女性がもっと働けるように」というような見出しを良く見る。そういう記事はたいてい働く女性に対して背中をぐいっと押してくれるような記事なのだけれど、時々違和感を感じることがある。保育所が増えて、もっと働くお母さんが増えたら、お母さんから離れる時間が多くなる子供だって増えるんだということを考えている記者の人はどれくらいいるのだろう。子供を預けて働くことが悪いことだとはもちろん思わないけれど、子供とお母さんが一緒にいる時間の大切さも、もっと取り上げられても良いのにと思う。
私がどんなに怒っても叱っても、寝る前には「おかあさんだいすきだよ。」と言ってくれる娘を見ていると、子供にとって母は絶対の存在なんだろうなあと思う。だから、母は悩みながらも明日も頑張ろうと思えるんだ。
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